父ちゃんの仕事場

気がつけば、五つの足で立っていた ― 鹿児島で僕が選んだ独立3年目の働き方

ある平日の朝のこと

5月の鹿児島の朝は、静かに明るい。

書斎のカーテンを開けると、朝日が斜めに差し込んでくる。机の上に細い光の帯ができる。窓の外に特別な景色が広がっているわけじゃない。それでも、この光の感じが好きで、毎朝この時間に座るのが習慣になっている。

書斎に入る前、ベランダで盆栽と観葉植物の様子を見るのも朝の儀式だ。水をやり、葉の色を確かめ、少しだけ枝を整える。鉢の中で静かに育っている小さな緑を見ていると、自分の事業も同じだなと思うことがある。毎日水をやるものと、たまに様子を見るだけでいいもの。育つ速度がそれぞれ違う。

書斎に戻り、コーヒーを淹れて、パソコンを開く。今日もやることはいくつもある。

会社員だった頃は、こんなふうに自分で予定を組み立てる必要はなかった。月曜から金曜、決まった時間に決まった場所へ行き、決まった役割をこなす。それが17年続いた。

今は違う。朝の僕の前にあるのは、複数の選択肢だ。

数えてみると、今、僕は五つの仕事を持っている。

ただ、最初から五つを目指していたわけではない。気がついたら五つになっていた、というのが正直なところだ。


五つの仕事の地図

整理すると、こうなる。

法人(合同会社HICカンパニー)として動いているもの

一つ目は、Visit Karate Kagoshima。外国人ゲスト向けの空手体験。自宅の和室を稽古場にして、依頼があった時だけ動く。僕の人生の核にある空手を、観光資源として形にしたもの。

二つ目は、駐車場と太陽光発電に関わる業務。法人として、これらの資産の管理に関する業務を担っている。日々の手間はほとんどない。何か問題が起きた時だけ動く、静かな足。

個人事業(HIC)として動いているもの

三つ目は、フードデリバリー。バイクに保温ボックスを積んで、街を走る。今はほぼ毎日、配達に出ている。日銭が入ること、体を動かせること、街の感覚を肌で感じられること。一つの仕事で三つの効果がある、僕にとって不思議とちょうどいい仕事。

四つ目は、料理体験。Airbnbで手巻き寿司の体験を一度実施した。今は表立っては動かしていないが、料理は元々好きで、いつでも再開できる種として持っている。

五つ目は、Web関連事業。これは少し広い括りになる。鹿児島の建設・職人系一人親方向けのLP制作サービス「LP Craft 鹿児島」、YouTubeチャンネル「ゼロパパキッチン」と「BLACK GREEN DINER」、そしてこのブログ「ゼロパパ・ワークス」。すべてをひとまとめにすると、Webを使って仕事をするという一つの大きな足になる。

正直に言えば、LP Craft 鹿児島は立ち上げただけで、今は静かにしている。YouTubeも更新が滞っている。それでも、Claude Codeを使って自分のサイトを育てたり、このブログを書いたり、Web関連の何かは毎日触っている。個別のサービスは止まっていても、領域としては動いている

将来、ここを大きく育てていきたいと思っている。今はその準備期間だ。


平日のルーティン、軽く

「五つの仕事を持っている」と書くと、毎日五つ全部を回しているように聞こえるかもしれない。実際は違う。

は、書斎で文章を書いている時間が多い。このブログの記事だったり、事業のメモだったり、Claude Codeに指示を出すための設計だったり。頭が一番動く時間だから、考える仕事をここに置いている。

昼前になると、バイクに保温ボックスを積んでフードデリバリーに出る。30分から2時間、街を走って何件か配達して帰ってくる。日銭が入って、体が動いて、街の空気を吸える。仕事と運動と気分転換が一つになっている時間。

午後は、依頼があれば外国人ゲストを迎えて空手体験をする。和室を稽古場に整え、お茶の準備をする。依頼がない日は、Claude Codeを開いてホームページをいじったり、次の事業の準備をしたりしている。

駐車場と太陽光は、ほぼ何もしていない。何か問題が起きた時だけ動く。それ以外の日は、存在しないかのように静かにしている。

料理体験とLP Craft 鹿児島も、今は依頼や案件が入った時だけ動く状態。種として持っているけれど、毎日水をやっているわけではない。

つまり、五つの仕事があると言っても、毎日全部が動いているわけではない。日によって動く足が違う。今日はどの足で立つかを、毎朝、自分で決めている。

これが、僕にとっての独立3年目の働き方だ。


なぜこの組み合わせになったか

「五つの仕事を持つ」と言うと、戦略的に組み立てたように聞こえるかもしれない。実際は違う。目の前の必要と、縁と、たまたまの巡り合わせで、こういう形になったというのが正直なところだ。

順番に話してみる。

法人を作ったのは、ずっと欲しかった器だったから

最初に動いたのは、合同会社HICカンパニーを作ったことだった。

会社員時代から、いつかは法人を作りたいと思っていた。きっかけは、ある本との出会いだった。坂下仁さんの「いますぐ妻を社長にしなさい」という本で、資産管理法人や不動産を扱う法人を作ることを推奨している内容だった。当時の僕は、いつか不動産を扱いたい、自分の器を持ちたい、という気持ちがずっとあった。

実は、HICカンパニーという社名にも、思い入れがある。

HICは、Hills Investors Cloudの頭文字を取ったものだ。「Hills」は、僕の名前「裕一(ひろかず)」の「裕(ひろ)」を英語にしたもの。普段使っているメールアドレスでも、「Hills Diner’s」という形で自分の名前を表記している。「Investors」は投資家、「Cloud」は頭脳。つなぐと、「裕の、投資家の頭脳が集まる会社」という意味になる。

元々、不動産や資産を扱う法人を作りたかったから、この命名が自分にしっくり来た。坂下さんの「JINカンパニー」というシンプルで意志のある社名スタイルにも、影響を受けている。

リベ大学長の発信も、同じ方向を後押ししてくれた。「法人を作ったら、何か入れたくなる事業をやりたくなる。だから箱を先に作るのもいい手だ」という考え方。器を持つことで、その中に入れるものを真剣に探すようになる。僕にとっては、これがしっくり来た。

独立を機に、ずっと持ちたかった器を、ついに作ることにした。マイクロ法人として、社会保険料の最適化を兼ねながら。

ただし、法人を作っただけでは、税務上の意味がない。法人として実体のある事業がないと、ただの箱で終わってしまう。最初は自動販売機の設置を試みたが、これは形にならなかった。

そこで税理士の永田先生からの提案で、駐車場と太陽光発電に関わる業務を、法人として受け持つ形を整えた。これで法人に「実体のある仕事」ができた。

これが、二つ目の足になった。

Visit Karate Kagoshima は、複数の縁が重なって立ち上がってきた

三つ目に動き出したのが、Visit Karate Kagoshima、外国人ゲスト向けの空手体験だった。

ただ、これも「インバウンド観光が盛り上がっているから空手体験をやろう」と単純に決めたわけじゃない。複数の縁が、同じ時期に、たまたま重なってきた

少し前から、僕は街中で外国人を見かけると、自分から話しかけることが時々あった。仕事でも観光案内でもなく、ただ興味があって、手探りで交流していた時期があった。鹿児島という地方都市で、外国の人と話すこと自体が新鮮で、楽しかった。何かに繋げようと思っていたわけじゃない。ただ、外国人への関心が、自分の中にずっとあった。

同じ頃、僕はずっと書道をやってみたいと思っていた。字を書くこと、墨の匂い、紙と筆で何かを表現することへの憧れが、なぜか強くあった。

それで、リベシティで書道教室を主宰している先生を見つけて、通い始めた。その先生は外国人向けの書道体験もされていて、それも僕の興味を引く要因の一つだった。「自分の好きなことを、外国人と一緒に体験する形にできる人がいる」ということ自体が、僕にとって発見だった。

書道教室に通いながら、僕は何度か、「自分は空手をやっている、いつか空手教室もやりたい」という話をしていたと思う。具体的な計画があったわけじゃない。漠然と、いつかは、という気持ちだった。

そんな中で、その書道教室の先生から、「インバウンド対応をしてみない?」という話をいただいた。

その一言が、ずっとバラバラだった僕の関心を、一つの形に繋げてくれた。外国人への関心、空手という人生の核、自宅の和室、地域の文化を伝えたいという気持ち。それらが「インバウンド向け空手体験」という形に集まってきた。

その後、HISさんとのコラボで空手体験を提供する話に発展した。HISさんの予約システム経由で、海外からのゲストが訪れるようになった。

振り返ると、Visit Karate Kagoshimaは、戦略から生まれたんじゃない。ずっとあった関心が、一人の方の一言から、形になっていった。そういう順番だった。

フードデリバリーは、独立前から走っていた

四つ目のフードデリバリーは、実は独立前から副業として走っていた。

きっかけは、ホテル関連事業の会社から福山通運に転職したことだった。当初は副業としてネット販売(AmazonやeBayなど)を考えていて、配送の勉強になると思って福山通運に入った。トラック運転手として、配送の世界を肌で知るところから始めようと思っていた。

そんなタイミングで、Uber Eatsが鹿児島に参入してきた

これは乗らない理由がない、と思った。配達の勉強にもなる。副業として現金収入も入る。バイクで街を走るのは性に合っている。すべてが噛み合った。

実は、自分でも意外なくらい楽しかった。ホテル時代に飲食を扱う仕事をしていた経験が、フードデリバリーと相性が良かったからだと思う。レストランの裏側を知っていると、配達先のお店との関係も自然に作れる。料理を運ぶことへの理解も、自然にあった。

独立してからも、フードデリバリーはやめなかった。むしろ、独立直後の不安定な時期に、毎日確実に入ってくる現金という意味で、心の支えになった。

今でも続けているのは、収入のためだけじゃない。バイクで街を走っていると、鹿児島の景色や、街にいる人たちの様子が、肌で分かる。デスクワークだけでは絶対に得られない感覚が、ここにある。

これは、計画して始めた仕事じゃない。続けているうちに、自分の生活に馴染んでいった仕事だ。

料理体験とWeb関連事業は、これから育てる種として

五つ目のWeb関連事業と、四つ目に挙げた料理体験は、今は静かにしている時期にある。

料理体験は、Airbnbで手巻き寿司体験を一度実施した。料理は元々好きで、いつかは形にしたかった。ただ、本格的に動かす前に、空手体験の方が先に立ち上がってきた。今は種として持っている状態だ。

Web関連事業も同じだ。鹿児島の建設・職人系一人親方向けにLP制作サービス「LP Craft 鹿児島」を立ち上げたが、今は静かにしている。YouTubeチャンネルも更新が滞っている。

ただ、Web関連事業は領域としては動いている。このブログを書いているのも、Claude Codeを使って自分のサイトを育てているのも、すべてWeb関連事業の中の活動だ。個別のサービスは止まっていても、領域全体としては毎日触れている

将来、ここを大きく育てていきたいと思っている。今は土を耕している時期だ。

結局、戦略じゃなく、縁と必要から組み上がってきた

こうして並べてみると、五つの仕事は、一つひとつにその時の必要と、その時の縁と、その時の興味があった。

最初から「五つ持とう」と決めて動いたわけじゃない。一つひとつの仕事が、それぞれの理由で立ち上がってきた。結果として、振り返ったら五つになっていた。それが今の僕の正直な姿だ。


五つは結果、目指したわけじゃない

毎朝、書斎に入る前にベランダで盆栽と観葉植物を見ていると、不思議なことに気づく。

鉢ごとに、育つ速度が違う

毎日水をやらないとしおれてしまうものもあれば、週に一度の手入れで十分なものもある。何ヶ月も変化がないように見えて、ある日突然新しい芽を出すものもある。同じベランダで、同じ朝日を浴びて、それぞれが自分の速度で生きている。

僕の五つの仕事も、同じだと思う。

毎日動かしている仕事もあれば、何かが起きた時だけ動く仕事もある。今は静かにしているけれど、いつか大きく育つかもしれない仕事もある。五つ全部が同じ速度で動く必要はない

例えば、LP Craft 鹿児島を立ち上げた時のことを思い出す。

AIの進化で、自分でもホームページを作れるようになった頃だった。学長から「今はターゲットを絞れば高単価で受注できるボーナス時期だ」という話を聞いて、自分もやってみようかなと思った。

実際にやってみて、「できるな」という感触はあった。クライアントワークは、やりやすくて楽しい部分もあるかもしれない。でも、やってみたからこそ見えてきたことがある。自分は、クライアントの依頼で作るより、コンテンツ制作や販売の方向に興味があるんだ、と。

今、LP Craft 鹿児島は手をつけたけれど、手放したような感覚で止まっている。やってみないと分からなかった。これは焦りじゃなくて、自分の本当の方向性が見えたということなんだと思う。

YouTubeチャンネルも同じだ。今は更新が滞っているけれど、最近、ゼロパパキッチンで料理を作りたい欲が、自分の中で高まってきている。近々、再開すると思う

すべての足に同時に重心を乗せようとすると、どこかが折れる。だから、その時々で動く足を選ぶ。動かさない時間は、次にどこに重心を乗せるかを見極める時間でもある。

五つの足で立つ、ということは、五つを同時に走らせることじゃない

その時々で、立てる足、休ませる足、これから動かす足、を選んでいくこと。それが、複数の足で立つことの本当の意味だと、今は思っている。

そして、五つという数も、固定じゃない。

これから六つ目、七つ目が増えるかもしれない。逆に、一つ二つは整理して四つに減らすかもしれない。数を維持することが目的じゃない。自分の人生の重心を、自分で動かせる状態を保つこと。それが、僕にとっての「複数の足で立つ」ということだ。


結び

書斎の窓から差し込む朝日が、机の上の光の帯を少しずつ動かしていく。

今日もやることはいくつもある。デスクに座って文章を書く時間。バイクに乗って街に出る時間。和室を整えてゲストを迎えるかもしれない時間。Claude Codeを開いてサイトをいじる時間。

どの足で立つかを、毎日、自分で選んでいる。

会社員だった頃には、なかった感覚だ。あの頃の僕は、決められた場所で、決められた役割をこなしていた。それは悪いことじゃない。17年間の会社員経験が、今の僕の土台になっていることは、別の記事でも書いた通りだ。

ただ、独立して3年目になった今、僕の前にあるのは、複数の選択肢だ。

毎朝、自分でその日の足を選ぶ。動かす足と、休ませる足を決める。その選択の積み重ねが、僕の人生になっていく。

五つの足で立っている、と書くと、何か特別なことをしているように聞こえるかもしれない。でも実際は、目の前の必要と、縁と、興味に従って動いていたら、たまたまこうなっただけだ。

戦略でもなく、計画でもなく、ただ自分の人生を、自分で選んでいる。

それが、僕にとっての「気がつけば、五つの足で立っていた」ということの中身だ。

ABOUT ME
ゼロパパ
鹿児島の父ちゃん。妻と3人の子どもと暮らしています。 17年続けたホテル業界で心を壊しかけ、独立を決意。 今は配達・空手体験・Airbnb・WEB制作で働きながら、 取り戻した時間で家族と過ごしています。 同じ状況にいる父親たちに届けたくて書いています。